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大阪家庭裁判所堺支部 昭和29年(家イ)132号 審判

申立人 原口一男(仮名)

相手方 村田サダ(仮名)

主文

相手方は申立人がその子であると認知せよ。

調停費用は各自弁とする。

事実及び理由

申立人の主張は要するに「申立人は従来肩書旧本籍地で父原口政男、母原口すみの○男として出生届されていたところ、母原口すみは昭和二八年○月○○日申立人との間に親子関係不存在確認調停事件を起し、当庁でその旨の合意に代る審判が為され、該審判が確定した結果、申立人は旧本籍の戸籍より消除され、現在無籍状態である。然るに申立人は相手方が申立人を分娩した実母であることを知つて出生届を依頼したが感情に拘泥してこれに応ぜず、申立人自らは無籍者の名に苦しむのみか、当年○才の長男にもやがて学令期となつてその累を及ぼすこととなるので敢えて本申立に及んだ」というにある。

相手方は合式の呼出を受けながら調停期日に出頭したいが、その提出した書面によれば、目下子供が病気で暫らく出頭できないから期日を延されたい。過日申立人に会つて用件は話してあるから申立人から事情を聴いて善処されたい、というにある。

よつて審究するに当庁昭和二十八年(家)イ第一一八号親子関係不存在確認調停事件の記録中申立人原口すみ証人村田サダの各供述調書を綜合すると、相手方村田サダが本件申立人原口一男の実母であることが明かである。又、一男が前記調停事件の審判の結果旧戸籍より消除され、現在無籍者であることは同人の旧戸籍の記載によつて明かである。

申立人の供述によると、相手方は再婚後の家庭の事情を理由に申立人の請求に容易に応じないらしく、本件申立後○月中頃申立人に面会し、縷々弁解したらしく。

右事情を綜合すると、本件申立は当事者間の合意によつて解決することは至難と思はれるので、調停手続を終了することにするが、申立人は目下受刑中でありその長男は○才であつて、学令期に達しているので、此のまま申立人を無籍状態におくことはいちじるしく公益に反するものと認められるに反し相手方は已に亡夫との間に三人の子女があつて身分も安定しているものと認められるので、申立人を認知することにより生活をいちじるしくこわされるうれいは先ず少ないと考えられる。

そこで当裁判所は調停委員の意見を聴き、当事者双方のために衡平に考慮した結果本申立を容れることが相当と考えられるので、家事審判法第二十四条に則り主文の通り審判した。

(家事審判官 三木光一)

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